私道トラブル 42条1項5号 道路について

私道のトラブルについて

私道のトラブルについて最高裁の判例を紹介します。
私道、位置指定道路(42条1項5号道路になります。)の最高裁の判例になります。
位置指定道路とは、よく建売でみかける道路です。
 
道路の通行を土地所有者が邪魔、妨害することを禁止しますという判例です。
今、国土交通省、法務省などで私道に関する法整備がすすめられています。
 
道路として使用しているのに一部の人が妨害する。
 
防災の点からも急いで解決する必要があると思います。
 
 
 

最高裁判例

次のサイトより下記を転載いたしました
http://www.courts.go.jp/
最高裁平成9年12月18日
建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。
 
 
主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理    由
上告人らの上告理由について
一 建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定(以下「道路位置指定」
という。)を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不
可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又
は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通
行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有
者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権
利)を有するものというべきである。
けだし、道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することが
できるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず、その通行が妨害され
た者であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則で
あるが、生活の本拠と外部との交通は人間の基本的生活利益に属するものであって、
これが阻害された場合の不利益には甚だしいものがあるから、外部との交通につい
ての代替手段を欠くなどの理由により日常生活上不可欠なものとなった通行に関す
る利益は私法上も保護に値するというべきであり、他方、道路位置指定に伴い建築
基準法上の建築制限などの規制を受けるに至った道路敷地所有者は、少なくとも道
路の通行について日常生活上不可欠の利益を有する者がいる場合においては、右の
通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、右の者の通行を
禁止ないし制限することについて保護に値する正当な利益を有するとはいえず、私
法上の通行受忍義務を負うこととなってもやむを得ないものと考えられるからであ
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る。
二 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は、昭和三三
年ころ本件土地周辺が大規模な分譲住宅団地として開発された際、各分譲地に至る
通路として開設された幅員四メートルの道路であり、昭和三三年一月一三日、川崎
市長から道路位置指定を受けた。
2 本件土地は、右の道路位置指定以後三〇年以上にわたり、被上告人らを含む
近隣住民等の徒歩及び自動車による通行の用に供されている。
3 被上告人らは、肩書の住所に居住し、自動車を利用する者である。被上告人
らがその居住地から自動車で公道に出るには、公道に通じる他の道路が階段状であ
って自動車による通行ができないため、本件土地を道路として利用することが不可
欠である。
4 上告人らは、昭和六一年一二月九日、贈与により本件土地の所有権(持分各
二分の一)を取得した。
5(一) 上告人らは、平成三年九月ころ、被上告人らを含む本件土地近辺の住民
に対し、同年一二月末日までに上告人らと本件土地の通行に関する契約を締結しな
い車両等の本件土地の通行を禁止するという趣旨のビラをまいた。
(二) 上告人らは、右(一)と前後して、専ら被上告人らの自動車通行をやめさせ
る意図の下に、本件土地に簡易ゲート等を設置した。その結果、被上告人らは、自
動車で本件土地を通行するたびに、いったん下車して右簡易ゲートを取り除かなけ
ればならなくなり、通行を妨害されている。
(三) 上告人らは、平成四年二月八日、被上告人らの所属する自治会に対し、同
年一二月末日をもって本件土地の通行を不可能にする工事を施工することがある旨
を通知した。
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三 右事実関係に基づいて検討する。
被上告人らは、道路位置指定を受けて現実に道路として開設されている本件土地
を長年にわたり自動車で通行してきたもので、自動車の通行が可能な公道に通じる
道路は外に存在しないというのであるから、本件土地を自動車で通行することにつ
いて日常生活上不可欠の利益を有しているものということができる。また、本件土
地の所有者である上告人らは、被上告人らが本件土地を通行することを妨害し、か
つ、将来もこれを妨害するおそれがあるものと解される。他方、右事実関係によっ
ても、上告人らが被上告人らの右通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の
事情があるということはできず、他に右特段の事情に係る主張立証はない。
したがって、被上告人らは、上告人らに対して、本件土地についての通行妨害行
為の排除及び将来の通行妨害行為の禁止を求めることができるものというべきであ
る。
四 以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。原判
決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官    藤   井   正   雄
裁判官    小   野   幹   雄
裁判官    遠   藤   光   男
裁判官    井   嶋   一   友
裁判官    大   出   峻   郎